外資企業による突然の解雇通告、解決金はいくら受け取れる?

労働

昨年11月、米ツイッター社で大量の従業員が解雇されました。日本法人で働く社員も対象となり、連日大きく報道されました。数千人に及んだその規模もさることながら、起業家のイーロン・マスク氏による買収手続きの完了から、わずか数日の間に解雇が実施されたことに驚いた方も多いでしょう。今回は同様に外資系企業に突然解雇を言い渡されてから、解決金を受け取るまでを事例を交えて解説いたします。

明日から出勤しなくて良い

外資系企業で働いていたTさんは、勤務開始から1年が経過したある日「明日から出勤しなくて良い」と突然解雇を通達されました。会社側が主張する解雇理由は、Tさんが目標を達成しなかったというものでした。Tさんは会社の通達に従い、会社を辞めるしかないのでしょうか。

労働契約法と解雇

日本の労働法では、会社が一方的に労働者を解雇することは認められておりません。労働契約法の第16条において、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合における解雇は、無効と定められています。

有期雇用の場合、契約期間内の解雇は無効ですが、契約期間終了による退職は解雇には該当しません(労働契約法第17条)。例えば、1年間の有期雇用契約であれば、1年が経過したタイミングでの退職は解雇にはなりません。ただし、3回以上契約が更新されている場合や、1年以上継続勤務している従業員の契約を更新しない場合は、30日前までに予告が必要とされています(有期労働契約の締結、更新及び雇止めに関する基準)。

そもそも、Tさんやツイッター社の事例のように外資系企業に勤務する従業員の解雇において、日本の労働法が適用されるのかと疑問に思う方もいるかと思いますが、外資系企業であっても日本の労働法が適用されます。これについては、当法律事務所の伊藤健弁護士のnoteでも解説しているので、気になる方は読んでみてください。

解決金の相場は

Tさんの場合、解雇理由が合理的で社会通年上相当であるかどうかを客観的に判断する必要があります。会社が主張している解雇理由は「目標の未達」で、まだ1年目であることを考えると争う余地はあると言えるでしょう。

Tさんは、この会社で仕事を続ける意志がなかったので、解雇の不当性を主張しつつ解決金を受け取って退職する方向で会社と交渉することにしました。解決金は、従業員本人の給与をベースに算出されることが一般的です。概ね、月収の数カ月分から年収1年分が相場となります。Tさんの場合、年収相当の2,000万円を目標にすることとなりました。

2カ月の交渉で解決金を倍増

私たちが調査を実施した結果、目標が達成できなかった要因はTさん自身の能力や勤務内容に起因するものではなく、マーケット環境に起因するものであると判断しました。この調査結果をもって会社側と2カ月に渡って交渉を行い、希望通りの約2,000万円の解決金を支払うことで合意することができました。当初会社側が提示した金額は1,000万円でしたので、増額しての着地となりました。

退職を希望しないなら

今回のケースでは、退職を前提として解決金を交渉する形で進めましたが、あなたがもし退職をしたくないのであれば、会社の解雇通知には従わないようにしてください。解雇が無効であれば、継続して働くことができます。承諾せずに、勤務を継続したい旨を主張しましょう。ご自身で交渉が困難な場合、私たち弁護士に相談してください。法律事務所Zには、GAFA出身で外資系企業に精通し、英語での交渉も対応できる弁護士が所属していますので、まずはお気軽にご相談ください。

依田俊一

2011年慶應義塾大学経済学部卒業、2014年東京大学法科大学院修了。法務博士(専門職)。経済産業省、中小企業庁を経て、アンダーソン・毛利・友常法律事務所入所。野村證券株式会社に出向し、法律事務所Zを創立。現在は国内ファンドに所属。証券会社において、ファイナンシャルアドバイザーとして、多数のM&A、事業再編の支援を担当した経験から、M&A、事業承継、買収ローン案件に強みを持つ。

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