【弁護士解説】トレントでAVをダウンロードしたら弁護士から通知が届いた場合の対処法

ネットトラブル

ある日突然届いた弁護士からの通知書。そこには、あなたがファイル共有ソフト「Bit Torrent」(通称トレント)などを使って、アダルトビデオなどをダウンロードしたと書かれていました。こうした通知を放っておくと、著作権者から賠償請求されてしまうことも…。最近増えているこうしたご相談の対応について、経験のある弁護士が解説します。

【事例】作品をダウンロードしたら賠償請求された

トレントでAVをダウンロードしたら権利元のAVプロダクションから発信者情報開示請求をされてしまった

実際に次のような事例が発生しています。

30代男性のAさんがある日帰宅すると、見慣れない書面が届いていました。

「あなた、こんな封筒が届いているけど何かしたの?」

妻から手渡された封筒には、弁護士事務所の署名の記載がありました。弁護士とやり取りした記憶はなく、恐る恐る開封してみると…

そこには、インターネットサービスプロバイダ(ISP)の代理人弁護士からの「意見照会書」なる書面が入っていました。AVプロダクションのX社がAさんに著作権を侵害されたとして、Aさんの個人情報開示(発信者情報開示請求)をISPに対して求めており、氏名や住所などの情報を開示してもよいかという内容です。

「AVの著作権侵害?何かの間違いでは」

Aさんは、著作権侵害に該当する行為の心当たりはありませんでしたが、意見照会書には、Aさんがファイル共有ソフト「Bit Torrent」(トレント)でダウンロードとアップロードをしたことが、著作権侵害に該当すると記載されていました。

「確かにトレントでAVはダウンロードしたけど、アップロードなんてしていない!」

対応に困ったAさんは、ネットで情報開示請求に関して調べてみました。5chなどの掲示板でAさんと同じくトレントがきっかけで情報開示請求された人たちのスレッドを見つけ、弁護士に相談することに決めました。Aさんの行為は著作権侵害になるのでしょうか。また、こうした意見照会書が届いた場合、どう対処したらよいでしょうか。順を追って解説していきます。

発信者情報開示請求とは?

AVプロダクションであるX社は、ファイル共有ソフト「Bit Torrent」(トレント)上に自社のAVが違法にアップロードされているのを発見しても、誰がアップロードしているのかはわかりません。そのため、損害賠償請求をするためには、まず、インターネット上のアクセスログ等から侵害している人が誰なのかを調査して特定しなければなりません。調査の結果、誰なのかが判明した場合、その人に対して損害賠償請求をするという2ステップになります。

一般的に、インターネット上で誰がアップロードをしているのかを知るためには、①インターネットのサービスを提供している事業者(コンテンツプロバイダやサービスサイトの運営者)に対してIPアドレスなどのアクセスログの開示を請求した後、②NTT東日本などのインターネット通信を提供している事業者(ISP・インターネットサービスプロバイダ)に対して、そのIPアドレスを契約している人が誰なのかを尋ねます。

一方、トレントの場合は、「トレントモニタリングシステム」により、アクセスしたIPアドレスを簡単に調査できます。そのためX社は、こうしたサービスを通じてAさんのIPアドレスを特定したのです。

もっとも、X社はIPアドレスだけでは利用者が誰なのかを知ることはできません。そのため、ISPに対して「このIPアドレスを契約しているのは誰なのか」を尋ねることになります。冒頭でAさんに届いた意見照会書という書面は、この手続きで送られたものです。なお、この意見照会書はインターネット回線の契約者宛に届くため、ご家族の名義で契約している場合は、そのご家族宛に届きます。

意見照会書が届いたら?

もし、Aさんのように意見照会書が届いた場合、どうすればよいでしょうか?

意見照会書に対して、個人情報を開示することに同意すると、ISPを通じてAVプロダクションに対して氏名や住所などの個人情報がすぐに開示されてしまいます。

意見照会書に記載されている内容について身に覚えがない場合でも、無視したり、同意を拒否すれば、あなたの個人情報が開示されてしまうおそれがあります。また、AVプロダクションがあなたの情報を開示するように裁判所に申し立てる可能性もあります。

同意すべきか否かの判断は、専門家でなければ難しいところです。ご家族に見られないうちに解決できたり、相手にあなたの住所を知らせずに解決できる可能性もあります。意見照会書が届いたら、ご自身で対応せずに弁護士に相談することをおすすめします。

トレントを使用するとなぜ違法になる?

AVプロダクションは、あなたの住所を特定すると著作権法に違反するとして、あなたに損害賠償金の請求をします。

相談者の中には、Aさんのように「ダウンロードしかしていないのに著作権法に違反するのか?」との疑問をお持ちの方もいらっしゃいます。しかし、トレントは、P2P(ピア・ツー・ピア)と呼ばれる技術を用いており、ダウンロードと同時に、アップロードもしているのです。

通常、インターネット上でファイルをダウンロードする場合、1つの大きなサーバーにアクセスしてデータをダウンロードします(クライアント・サーバー方式)。しかし、P2P技術は、1つの大きなサーバーではなく、アクセスしているひとりひとりのパソコン内のデータを共有して、それぞれのパソコンが直接やり取りする方式でファイルをダウンロードします。

著作権者が許可をしていれば、ファイルをアップロードしたり、トレントでダウンロードすることは当然適法です。そのため、トレントを利用すること自体が違法というわけではありません。

しかし、著作権者に無断でAVなどの作品をサーバーにアップロードし、誰もがダウンロードできるようにすることは、当然のことながら著作権法に違反します。

この場合、刑事上は、懲役や罰金が科されることもあります。また、民事上は損害賠償請求をされてしまう可能性があります。

トレントの場合、ダウンロードと同時にアップロードをする仕組みのため、AVのダウンロードが完了すると、他の誰かがあなたのパソコンからそのAVをダウンロードしていることになります。つまり、トレントを利用しているということは、AVを違法にアップロードしているのと同じ状態にあるのです。だからこそ、トレントを利用してAVをダウンロードした場合、何らかの法的責任を負う可能性は否定できないのです。

しかも、P2Pの仕様上、複数ユーザーがダウンロードをすることになりますので、その分だけ損害賠償金額も増えてしまいます。

損賠賠償請求にはどう対処すればいい?

相談者の中には、Aさんとは異なり、意見照会書を放置し続けた後、AVプロダクションの代理人弁護士から「損害賠償金を支払え!」と書かれた通知書を受け取ったという方も多くいらっしゃいます。こうした段階では、どのように対処すればよいのでしょうか?

そもそもトレントを利用した覚えがない場合、その旨を主張することが考えられます。しかし、相手が弁護士の場合、こうしたことを的確に伝えることができず、裁判や刑事罰をちらつかせながら、強気の交渉をしてくることもあります。

他方、トレントを利用した覚えがある場合、速やかに謝罪の意思を伝え、真摯に対応することが重要です。しかし、AVプロダクションから請求されている金額が妥当なのかは、しっかりと検討が必要です。

トレントを利用した場合の損害賠償の金額については、東京地裁や東京高裁の裁判例があります。この裁判例を前提として金額が妥当なのかを判断することになります。こうした判断は、弁護士でなければ難しいため、一度、弁護士に相談することをおすすめします。

全国対応・トレントのご相談は法律事務所Zまで

X社のように相手が弁護士に依頼している場合、弁護士に相談をすることが早期解決のためには重要です。うまく対応をすれば、住所を明かすことなく解決することも可能です。弁護士には守秘義務がありますので、安心してご相談ください。

法律事務所Zには、トレント利用に関する発信者情報開示請求や損害賠償請求の対応経験がある弁護士が複数所属しております。全国からの依頼を受け付けております。トレントに関するご相談は、相談料無料でお受けしておりますので、お気軽にご相談ください。

※本記事は著作物の違法アップロードおよびダウンロードを推奨するものではございません。

溝口矢 2016年慶應義塾大学法科大学院卒業後、ベンチャー企業でのマーケティング等に関与。 弁護士登録と同時に入所した弁護士法人Martial Artsでは、不動産分野、債権回収を中心に多数の一般民事事件や中小企業法務を取り扱った。不動産会社内で企業内法務にも携わる。 知的財産分野に関心があり、エンターテインメント関係の相談対応も手掛けている。

小松 2018年慶應義塾大学法学部法律学科卒業、2021年東京大学法科大学院修了。法務博士(専門職)。 一般民事事件、刑事事件に関心を有する。

伊藤 建

弁護士、法務博士(専門職)、大阪大学大学院高等司法研究科非常勤講師、広島大学法科大学院客員准教授、関西大学法科大学院非常勤講師。内閣府、消費者庁を経て、琵琶湖大橋法律事務所開業後、資格試験プラットフォームを運営する株式会社BEXAを創業。日本海ガス株式会社入社を経て、法律事務所Zを創立。多数の一般民事事件に従事したほか、初の受任事件で無罪を獲得し、第14回季刊刑事弁護新人賞最優秀を受賞するなど、訴訟戦略に強みを持つ。中小企業・ベンチャー企業の一般企業法務のみならず、起業家弁護士として、DX改革や新規事業創出支援、ルールメイキングも得意とする。

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