【弁護士解説】セックスした女性から被害届を出された?!相手からキスしてきたのに犯罪になるの?不同意性交・わいせつ罪の成否と示談のポイント

男女問題

近ごろ、お笑い芸人の松本人志さんやサッカー日本代表の伊東純也さんなど、有名人が性加害疑惑で活動自粛をせざるを得なくなってしまうケースが増えています。その背景には、令和5年の刑法改正により不同意性交罪等が新設されたことをはじめとする性加害に対する厳罰化の傾向が影響しているものと思われます。本記事では、性加害問題で刑事事件に巻き込まれてしまった男性やそのご家族・ご友人に向けて対応ポイントを解説いたします。

【事例】女性からキスされてセックス→レイプだったと被害届を提出された

20代男性のAさんは、20代女性のBさんを含めた複数人でバーベキューをしました。大いに盛り上がったこともあり、一同は近くにあったAさんの自宅に移動して、二次会を行いました。

Aさんはお酒が飲めないためアルコールには一切口をつけていません。一方、Bさんを含めた他のメンバーはかなり酔っている状況でした。時間が経つと、徐々にメンバーが家路につき、AさんとBさんの二人だけに。

Bさんが酔っていたため、酔い覚ましになればとAさんはBさんをベランダに連れ出しました。

「ずっとあなたのことが気になっていたの…」

そう言うとBさんはAさんにキスをしました。悪い気はしなかったBさん。そのままの流れで、二人は性行為をするに至りました。

翌朝、Aさんは最寄駅までBさんを送りました。

「昨日はありがとう」「また近いうちに飲みに行こう」

二人はLINEでそんなやりとりを交わしました。

それから1週間後…。見知らぬ番号からAさんの携帯電話に着信がありました。

「Bさんから強制わいせつ罪(当時)の被疑事実で被害届が提出されたので、事情聴取にくるように」

電話は警察署からでした。

「強制わいせつ?誘ってきたのはBさんだぞ。普通にLINEもしていたのに…」

Aさんはこのまま罪に問われてしまうのでしょうか。また、どんな対応を取るべきなのでしょうか、詳しく解説していきます。

逮捕される?性犯罪・性加害になる3つのパターン

まず、どのような行為において、不同意性交等罪・不同意わいせつ等罪が成立するのでしょうか。問題の行為を説明します。

①Noと言わせず性的な行為を行った

相手が拒否できない状況を利用したり、相手が拒絶しているのを無視して性的な行為を行うような場合です。相手が拒否できない状況であったかや相手が拒絶していたかどうかは客観的にみて曖昧な部分も多いため、思わぬ形でこのパターンに該当していると扱われてしまう可能性があります。

②誤解させて性的な行為を行った

性的な行為ではないと勘違いをさせて、性的な行為を行うような場合です。

③16歳未満の者へ性的な行為を行った

13歳未満の者への性的な行為については、同意があったとしても、不同意性交等罪や不同意わいせつ等罪が成立する可能性があります。また、13歳以上16歳未満の者への5歳以上年長の者による性的な行為についても成立する可能性があります。相手から明確に年齢を聞いていない場合でも、状況や会話の内容から年齢を認識できたような場合には、「知らなかった」という主張が認めてもらえない可能性もあります。

不同意性交等罪の罰則は5年以上の有期拘禁刑(懲役刑)・不同意わいせつ等罪の罰則は6か月以上10年以下の拘禁刑(懲役刑)と大変重いです。Aさんのケースでは、①に該当するかどうかがポイントとなります。 

示談や交渉は弁護士に相談を!

Aさんのように性犯罪をしたと疑われた場合には、一刻も早く弁護士に相談・依頼してサポートを受けることが重要です。その理由とメリットを説明します。

①示談の獲得

弁護士を通じて被害者や関係者と連絡をとることで、示談を行い、被害届の取下げや減刑を獲得することができる場合があります。

特に、性加害をしたと主張している相手に対して、ご自身で示談をしてしまうと「お金でもみ消そうとしている」とか、「被害届を取り下げるように脅迫された」といわれてしまうリスクがあります。こうしたリスクを回避するためにも、弁護士を介して示談をすることが重要です。

②不利な供述・自白の防止

性犯罪をしたことを疑われると、不安や恐怖から逃れるため、本当は事実と異なるのに相手の主張の一部を認めてしまったり、罪を認める自白をしてしまったりしてしまう場合があります。ご自身では、警察官や検察官にわかってもらおうと事実のとおりに話しているつもりでも、気づかないうちに不利な供述をとられてしまうリスクがあります。

警察官や検察官は取調べのプロです。弁護士と相談し、精神的なサポートを受けるとともに、取調べの準備を行うことで、適切な防御をすることができます。

③証拠の保全

実際に犯罪が成立するかどうかの判断にあたっては、SNSやメールでの連絡状況や防犯カメラで撮影された行動状況等が重要な事実となります。捜査や裁判のポイントを知る弁護士からアドバイスを受けることで、重要な事実を裏付ける証拠を保全することができます。

④逮捕・勾留・報道の回避(職場・身内バレの防止)

刑事事件として捜査が行われると、被疑者として逮捕・勾留され、最大23日間の身体拘束を受けることになってしまう場合があります。

逮捕・勾留されていることや性犯罪の容疑がかけられていることを職場の同僚や家族、友人に知られれば大変な思いをすることは想像に難くないでしょう。また、何日も身体を拘束されれば、その間、学校や仕事を休まざるを得なくなり、日常生活に及ぼす影響も計り知れません。特に出席日数が重要な方や試験を控えている方、経営者や重要なポストに就いている方にとっては、大きな問題といえます。

依頼を受けた弁護士は、逮捕・勾留の身体拘束からの早期解放や報道を回避してダメージが最小限のものとなるよう尽力します。

⑤不起訴処分の獲得

起訴がされなければ、裁判によって有罪とされることはありません。そのため、依頼をうけた弁護士は、不起訴処分を獲得できるよう上記のような対応を行います。

⑥無罪・執行猶予の獲得

万一、起訴されてしまった場合でも、依頼を受けた弁護士は、あなたの言い分を踏まえて、無罪の獲得を目指して全力を尽くします。また、仮に罪を認めている場合であっても、一発で実刑にならないよう執行猶予を獲得するためにも全力を尽くします。

Aさんの場合、警察から電話をもらってすぐに当法律事務所に相談にいらっしゃいましたので、早期にこれらの対応を弁護士が主導して行うことができました。

法律事務所Zのサポートで示談へ

依頼を受けた私たち法律事務所Zの弁護士は、警察を通じてBさんに連絡をとりました。Aさんは、同意があったため犯罪にはあたらないと考えている一方で、Bさんが被害届を提出しているため、不快な思いをさせてしまった面があることについてはきちんと謝罪したいと考えていました。こうした希望を踏まえ、速やかに警察を通じて示談の交渉に入りました。Bさんは当初、示談に難色を示しておられましたが、粘り強く対応した結果、Aさんの誠意ある謝罪の気持ちを理解し、示談に合意するとともに被害届を取り下げました。

こうして、Aさんは逮捕されることも起訴されることもなく、誰にもバレることなく、平穏な日常生活に戻ることができました。

性被害を主張するに至ったまさかの理由

実は、今回ご紹介したAさんの事例には後日談がございます。

事件の解決後、Aさんは友人伝いに衝撃の事実を聞きました。Bさんには、同棲している彼氏がおり、Aさんとの関係を持ったあと、朝帰りをしたことで浮気を疑われ、最終的にAさんと性行為をしたことがばれてしまったそうです。Bさんは咄嗟に「Aさんにレイプされた。無理やりされたセックスだった」と嘘をついてしまいました。激怒した彼氏を見て、そのまま後に引けなくなってしまい、その彼氏に勧められるがまま、被害届を提出することになったとのことです。

このような行為は虚偽告訴罪にあたり得ますが、「取り戻した日常を大切にしたい」というAさんの真摯なお気持ちを踏まえ、Bさんの対応を問題とすることはしませんでした。

最近では、YouTuberの街頭インタビューで10代の女性が「男友達にお父さんのフリしてもらって電話で脅して(性行為をした相手の男性から)現金30万もらった」と回答したことが話題にもなっています。

このような嘘や脅し、美人局のような行為は、男性にとっては大変な脅威です。マッチングアプリなどで、初対面の異性と会うことが容易な時代になった今、トラブルに巻き込まれた時には、信頼できる弁護士のサポートを得ながら、しっかりと自衛することが重要といえるでしょう。

お困りの際は法律事務所Zまで!

法律事務所Zでは、刑事事件や男女問題についての様々な対応経験のある弁護士が多数所属しております。刑事事件については、無罪や性犯罪に関する非行事実なしを理由とする不処分決定(少年事件における無罪判決といえるもの)を獲得したことのある弁護士もおります。お困りの際は、お気軽にご相談ください。

※本記事は不同意性交・わいせつ行為を推奨するものではございません。

伊藤 建 弁護士、法務博士(専門職)、大阪大学大学院高等司法研究科非常勤講師、広島大学法科大学院客員准教授、関西大学法科大学院非常勤講師。内閣府、消費者庁を経て、琵琶湖大橋法律事務所開業後、資格試験プラットフォームを運営する株式会社BEXAを創業。日本海ガス株式会社入社を経て、法律事務所Zを創立。多数の一般民事事件に従事したほか、初の受任事件で無罪を獲得し、第14回季刊刑事弁護新人賞最優秀を受賞するなど、訴訟戦略に強みを持つ。中小企業・ベンチャー企業の一般企業法務のみならず、起業家弁護士として、DX改革や新規事業創出支援、ルールメイキングも得意とする。

溝口矢

2016年慶應義塾大学法科大学院卒業後、ベンチャー企業でのマーケティング等に関与。 弁護士登録と同時に入所した弁護士法人Martial Artsでは、不動産分野、債権回収を中心に多数の一般民事事件や中小企業法務を取り扱った。不動産会社内で企業内法務にも携わる。 知的財産分野に関心があり、エンターテインメント関係の相談対応も手掛けている。

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