デジタルタトゥーは削除できる?リスクや削除方法を弁護士が解説

ネットトラブル

インターネットやSNSで誰もが情報収集と発信ができるようになり便利になった一方で、いわゆるネットトラブルについても、誰もが当事者になり得る時代になりました。当事務所でも、近年ネットトラブルでお困りの方からの相談が増えています。今回はデジタルタトゥーについて解説していきます。

デジタルタトゥーとは

デジタルタトゥーは文字通り、デジタルとタトゥーを組み合わせた造語で、一度ネット上に公開された情報が、削除されずにタトゥーのように残り続けてしまうことを表します。主に自身にとって不都合な情報についてを指し、ネガティブな状況で用いられます。

ご自身でSNSに投稿した文章や写真だけでなく、他人のアカウントを通じて拡散された投稿や悪意を持ってブログなどに書き込まれたデマ、報道機関による実名報道など、ネット上に公開されたあらゆる情報が対象となります。

デジタルタトゥーのリスクと問題点

では、デジタルタトゥーによって生じるリスクやトラブルにはどのようなものがあるでしょうか。身近なところであれば、友人同士やご近所であらぬ噂が広がり、人間関係に影響が出ることがあります。その対象はご自身だけでなく、ご家族に及ぶこともあります。

場合によっては、交際相手と別れるきっかけになったり、縁談が破談になってしまうきっかけにもなり得ます。

仕事に影響が出ることもあるでしょう。職場で同僚との人間関係が悪くなったり、取引先にも知られてしまうと最悪の場合取引を停止されてしまったり、会社にとっても不利益をもたらすことになってしまいます。それが原因で懲戒処分となることもあります。

就職活動中であれば、エントリー先の人事担当にデジタルタトゥーを発見されて、就職が困難になるということも考えられます。

特に、芸能人や企業の経営者、政治家などの有名人であれば、その影響範囲も大きくなっていくでしょう。

具体的な被害事例について

実際にはどのような被害があるでしょうか。ある企業の経営者は、匿名のブログサイトに悪意のあるデマを書き込まれてしまい、その投稿が複数の転載サイトに拡散された結果、仕事に悪影響が出てしまいました。

他には、過去に食中毒を出して報道されてしまった飲食店が、すでに何年も経過しているにも関わらず、ネット上の記事が消えずに困っているというケースもあります。

企業では、会社でトラブルをおこし解雇した元従業員が、ネット上に会社の悪評やデマを投稿して採用活動に悪影響が出てしまったという事例もあります。

このように、個人や企業など誰しもが、デジタルタトゥーの被害者になりうるのです。被害が大きくなる前に、弁護士に相談して適切な対策をとりましょう。

デジタルタトゥーの削除方法

一度インターネット上に公開されてしまった記事や投稿を削除するには、どうしたら良いのでしょうか。主に次の3つの方法で、順を追って削除要請を行っていきます。

①運営者に削除要請

まずは、SNSやブログ、報道機関など該当のサイトやサービスの運営者に対して、問い合わせフォームやメールなどを通じて削除を要請します。実名報道においては、プライバシーの侵害を主張するのも有効です。この場合、個人で連絡しても無視されてしまう可能性が高いため、弁護士に相談の上、弁護士から削除要請や損害賠償請求する旨を連絡するのが効果的です。

②プロバイダーに削除を依頼

サイトやサービスの運営者が削除に応じてくれない場合、プロバイダーに対して削除を依頼します。一般的にブログやウェブサイトは、インターネットサービスプロバイダーが提供するサーバー上に記事などのコンテンツを設置しています。つまり、記事をネット上から削除したい場合、該当のサーバー上から削除すれば良いのです。ここでいうプロバイダーとはこのサーバーの提供者を指します。

削除依頼として代表的な方法は、一般社団法人テレコムサービス協会(通称テレサ)のガイドラインに沿ったフォーマットである「テレサ書式」を使って申請するものです。同協会には多くのIT関連企業が加入しているため、業界内で広く認知された書式と言えます。

③裁判所に仮処分を申し立てる

プロバイダーがテレサ書式による削除依頼に応じなかった場合、裁判所に仮処分を申し立て、プロバイダーに対して該当記事を削除する仮処分命令を発令してもらいます。

プロバイダーにはプロバイダーとしての責任上、削除要請に応じにくい事情があります。本来プロバイダーは、サーバーの利用者(ブログやサイト運営者)に対して、サービス提供者としての責任があります。仮に該当のブログ記事が、誰に対しても権利侵害をしていない正しい情報に基づいた記事であるにも関わらず、依頼に応じて削除したとします。すると、サーバー利用者であるブログ運営者から損害賠償請求を受ける可能性があるのです。

つまり、プロバイダーには、記事を削除してほしい側とサーバーの利用者の双方から法的責任を問われる立場にあり、その責任と免責の対象を明確にするプロバイダ責任制限法という法律が存在しています。裁判所から削除命令を受けた場合、裁判所が削除すべき理由のある情報であると認めたということになり、プロバイダ責任制限法の定めによって記事を削除したことによる責任を問われることなく、削除を行うことができるのです。

弁護士に相談して早期に解決を

デマや誹謗中傷、名誉毀損、実名報道など、どのようなケースにおいても、基本的な削除要請の方法は同じです。ご本人で削除要請を行なうこともできますが、手続きが複雑だったり法的根拠に基づいた削除申請を行えるのは弁護士に限られます。

法律事務所Zでは、テレサ書式の記入や仮処分申し立てについてもノウハウがございます。GAFAなどのIT企業出身の弁護士や、芸能事務所の顧問弁護士を務める弁護士も所属しており、ネットトラブルに関する知見も有しております。ネットにまつわるお困りごとは、ひとりで悩まず相談してみてください。

依田俊一

2011年慶應義塾大学経済学部卒業、2014年東京大学法科大学院修了。法務博士(専門職)。経済産業省、中小企業庁を経て、アンダーソン・毛利・友常法律事務所入所。野村證券株式会社に出向し、法律事務所Zを創立。現在は国内ファンドに所属。証券会社において、ファイナンシャルアドバイザーとして、多数のM&A、事業再編の支援を担当した経験から、M&A、事業承継、買収ローン案件に強みを持つ。

依田俊一をフォローする
ネットトラブル
シェアする
タイトルとURLをコピーしました