前回の記事にて、ご自身やご家族、知人が痴漢で逮捕されてしまった場合の流れについて解説いたしました。今回はその中でも、仕事への影響について解説していきます。
逮捕されたら職場に連絡はいく?
ご自身やご家族が痴漢で逮捕されてしまった場合に、「仕事はどうなってしまうの?」と心配される方も多いかと思います。まず、痴漢で逮捕された場合に職場に連絡がいくかというと、業務に関連した事件でない限り、逮捕後や取り調べ過程において警察が職場に連絡することは原則としてありません。一方で同居している家族には、状況や居場所を伝える連絡がいくことになります。
家族への連絡については、別の記事で解説していますので詳しくはこちらをお読みください。
逮捕されてしまった場合、携帯電話やスマホは没収されて自由に外部と連絡を取ることはできません。長期間身体拘束が続くため、無断欠勤が続いてしまいます。警察署では最大48時間、検察庁に送致(送検)されると最大で20日間勾留されます。無断欠勤が続けば、職場の上司や同僚から状況確認の連絡が家族に行くでしょう。前述の通り、家族には警察から逮捕の事実が伝えられていますので、弁護士に相談し、職場に対して家族からどう説明するかを決めておくとよいでしょう。
早期に被害者と示談が成立したり、不起訴で身柄が解放された場合、職場に知られることなく復帰できる可能性もあります。
逮捕されたら解雇されるか
では、会社に逮捕の事実が知られてしまった場合、解雇されてしまうのでしょうか。痴漢で逮捕された場合に解雇するかどうかの判断は、職場によって異なります。民間の企業に勤めている会社員の場合では、就業規則によって定められていることが多いです。仮に、就業規則に解雇対象として定められていたとしても、即座に解雇されるわけではありません。
こちらの記事でも解説しましたが、日本の労働法では、会社が一方的に労働者を解雇することは認められておりません。労働契約法の第16条において、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合における解雇は、無効と定められています。
痴漢の態様や被害状況に対して、懲戒解雇が相当ではない場合は、解雇が無効となる場合もあります。
解雇される可能性が高いケースを説明していきます。
①職場や同僚に影響がある場合
同僚に痴漢してしまっていたり、会社名が報道されて会社の評判や社会的な信用を低下させてしまった場合、社員や会社に損害を与えたとして懲戒解雇となる可能性があります。
②公務員の場合
公務員は国民の信頼を得て業務を遂行すべき立場にあるため、会社員などに比べると懲戒免職となる可能性が高いといえます。
③有罪判決を受けた場合
就業規則で有罪判決を懲戒解雇の対象として定めている企業は多いです。また、拘禁刑(懲役刑)となる場合、物理的に通勤はできませんので解雇となってしまうでしょう。条例(東京都迷惑防止条例の場合)違反では6か月以下の懲役又は50万円以下の罰金、不同意わいせつ罪では6か月以上10年以下、不同意性交罪では5年以上20年以下の拘禁刑となります。
痴漢で解雇されないためには
痴漢で逮捕されてしまった場合に解雇を防ぐためには、会社に知られる前に早期に示談を成立させて、不起訴処分等となり、職場復帰することが重要です。示談を進めるためには、弁護士の協力が不可欠です。
当然ながら示談を進めるためには、被害者と連絡を取る必要がありますが、痴漢の場合、被害者側が加害者に対して連絡先を教えることを拒否するケースが多いです。警察や検察が加害者に対して、直接連絡先を教えることもありません。
弁護士が間に入ることで、加害者本人には連絡先を開示しないことを条件に、被害者との交渉を進めることができます。
痴漢による懲戒解雇を免れた場合でも、降格、停職、減給など、その他の処分が下される可能性はあります。どのような処分に該当するかは、就業規則や会社の判断によるところが大きいです。
解雇されてしまったら
万が一解雇されてしまっても、無効にできる可能性があります。前述の通り、労働法では、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合における解雇は、無効と定められています。
例えば、示談が成立していたり、略式起訴で罰金刑となっていて解雇された場合、悪質性が低く会社に与えた損害が少ないとみなされ、無効となる可能性があります。
痴漢事件は法律事務所Zに相談を
ここまで、痴漢で逮捕された場合の職場への影響について解説しました。早期に弁護士が介入することで適切な対処とプロセスに沿って解雇を防ぐことができる可能性があります。
相談する弁護士を選ぶ際は、痴漢事件の経験がある事務所に相談するのが良いでしょう。法律事務所Zでは、痴漢で一度逮捕されてしまったケースで、示談に持っていった実績もございますので、お困りの際はご相談ください。