詐欺被害に遭った場合、警察へ相談することで、被害届の提出や捜査につながる可能性があります。ただし、警察の主な役割は犯罪の捜査や犯人の検挙であり、被害金の返金交渉を代わりに行う機関ではありません。
被害金の返金を目指す場合は、弁護士への相談を検討する必要があります。弁護士は被害状況や証拠を整理したうえで、詐欺業者や関係先に対する返金請求を進めることができます。
本記事では、詐欺被害を警察に相談した場合に受けられる対応や、返金につながりにくい理由を解説。あわせて、弁護士へ相談するメリットや、信頼できる弁護士の選び方も紹介します。詐欺被害に遭い、これからどう動けばよいかわからない方は、ぜひ参考にしてください。
【監修】

| 伊藤 建(いとう たける) 消費者庁出身・法律事務所Z代表弁護士 2011年に国家公務員第Ⅰ種試験、司法試験にダブル合格。多くの詐欺被害案件を手がけ、被害額数100億円の大規模詐欺事件でも勝訴判決を得る等の実績を有する。 |
警察に詐欺被害を相談したらどうなる?

詐欺被害に遭ったとき、相談先としてまず警察を思い浮かべる方も多いでしょう。警察へ相談すると、被害状況の聞き取りが行われ、状況に応じて次のような対応を受けられます。
- 被害状況の聞き取りや今後の対応に関する助言
- 被害届の提出に関する案内
- 振込先口座の凍結につながる対応
- 被害内容に応じた相談窓口の案内
ただし、警察の主な役割は犯罪の捜査や犯人の検挙です。詐欺業者との返金交渉を代わりに行う機関ではないため、警察へ相談しただけで返金が実現するとは限りません。
それぞれの対応について、詳しく見ていきましょう。
被害状況の聞き取りや助言・被害届の案内
警察へ相談すると、詐欺の手口や被害額など被害状況の聞き取りが行われます。今後の対応について助言を受けられることもあり、事件性があると判断された場合は、被害届の提出について案内されます。
被害届は、犯罪被害を受けた事実を警察へ申告するための書類です。受理されたからといってすぐに捜査が始まるわけではなく、証拠の有無や被害状況などをふまえて警察側が個別に判断します。
詐欺に使われた口座の凍結
銀行振込による詐欺で振込先口座が判明している場合は、警察や金融機関への連絡によって、口座の凍結につながる可能性があります。
口座に資金が残っていれば、振り込め詐欺救済法に基づき、被害回復分配金を受け取れる場合もあります。ただし、分配の対象となるのは口座に残っている資金です。犯人がすでにお金を引き出していた場合は、分配金を受け取れないことがあります。
口座の凍結自体も、金融機関や警察が状況を確認したうえで判断するため、必ずしも実施されるわけではないと考えておきましょう。
被害内容に応じた相談窓口の案内
警察へ相談した結果、消費生活センターや弁護士会、金融機関など、被害内容に応じた窓口を案内される場合もあります。
警察が主に担当するのは、犯罪の捜査や犯人の検挙です。一方、詐欺業者に対する返金請求を進めたい場合は弁護士、契約や解約を含む消費者トラブルについて相談したい場合は消費生活センターなど、目的によって適した相談先が異なります。
警察から別の窓口を案内された場合も、「警察では対応してもらえなかった」と考える必要はありません。被害回復に向けて、必要な対応を取れる機関へつなぐための案内ととらえ、早めに相談しましょう。
詐欺被害を警察に相談しても返金につながりにくい理由
詐欺被害は警察に相談できるものの、返金にはつながりにくいのが実情です。本章では、警察に相談しても被害を回復しにくい理由について解説します。
詐欺は証拠がないと事件化しにくい
詐欺被害を警察に相談し、相手とのやり取りや支払い記録を提出しても、すぐに事件化や捜査につながるとは限りません。
詐欺事件では、相手がはじめから騙す意図を持っていたことや、実際に誰が詐欺行為を行ったのかを突き止める必要があります。相手の身元を特定できない場合や、複数の被害をまとめて捜査する必要がある場合には、事件化までに時間がかかることもあります。
民事事件と判断される場合がある
詐欺被害を警察に相談しても、契約内容や金銭の支払いをめぐる当事者間のトラブルとみられ、捜査につながらない場合があります。
民事事件と刑事事件の主な違いは、次のとおりです。
| 民事事件 | 個人や法人の間で生じた契約、金銭、損害賠償などのトラブルを解決する手続き |
| 刑事事件 | 犯罪の疑いについて捜査し、犯人の処罰を求める手続き |
金銭を支払った事実があっても、単なる契約不履行や当事者間の認識の違いとみられる場合、警察による捜査にはつながりにくくなります。
ただし、警察が捜査しない場合でも、返金を求める方法がなくなるわけではありません。相手方との交渉や支払督促、民事調停、訴訟など、民事上の手続きを検討できます。
警察の役割は犯人の捜査・検挙であり返金交渉ではない
警察の主な役割は、犯罪を捜査し、犯人の検挙につなげることです。被害者に代わって相手方と返金交渉を行う機関ではありません。
警察と、民事上の返金請求を行う弁護士では、担う役割が次のように異なります。
| 機関 | 警察 | 弁護士 |
| 主な役割 | 犯罪の捜査・犯人の検挙 | 被害者の代理人として交渉や請求を行う |
| 返金交渉 | 原則として行わない | 依頼を受けて対応できる |
| 主な手続き | 刑事事件としての捜査 | 民事上の返金請求・示談交渉・法的手続き |
警察への相談は捜査のきっかけになりますが、相手方への返金請求は別の手続きとして進める必要があります。
詐欺被害の返金を弁護士に相談する3つのメリット

詐欺被害で失ったお金の返金を求める場合は、警察への相談とは別に、相手方への返金請求を進める必要があります。弁護士へ相談する主なメリットは、次の3つです。
- 法的な根拠を整理して返金を求められる
- 詐欺業者との返金交渉を任せられる
- 証拠整理や手続きの負担を減らせる
法的根拠に基づいて返金請求ができる
詐欺被害の返金を求めるには、被害に遭ったという主張だけでなく、どのような根拠で相手に返金を請求するのかを整理する必要があります。
弁護士へ相談すると、被害の経緯や契約内容、相手とのやり取りなどを確認したうえで、法的な観点から返金を求められるかを検討してもらえます。返金請求が可能な場合は、相手方への通知や示談交渉、必要に応じた法的手続きなど、状況に合った方法で対応を進められます。
ただし、弁護士へ相談したからといって、必ず返金されるわけではありません。返金の見込みや適切な対応は被害状況によって異なるため、まずは資料をもとに状況を整理することが大切です。
詐欺業者との返金交渉を任せられる
弁護士へ依頼すると、相談者の代理人として、詐欺業者や関係先との返金交渉を進めてもらえます。
被害者が自分で連絡しても、相手に無視されたり、言いくるめられて再び支払いを求められたりする可能性があります。また、被害を受けた相手とやり取りを続けること自体が、大きな精神的負担になる方もいるでしょう。
弁護士に交渉を任せることで、相手方と直接やり取りする負担を減らしながら、返金請求を進められます。
証拠整理や手続きの負担を減らせる
返金請求を進めるには、相手とのメッセージや支払い履歴、契約画面などを整理し、被害の経緯を明らかにする必要があります。
弁護士へ依頼すると、必要な資料について助言を受けられるほか、相手方への書面作成や連絡、返金交渉なども任せられます。状況によって法的手続きが必要になった場合も、対応を依頼できます。
被害に遭った直後は、不安や焦りから冷静に対応するのが難しいこともあります。専門家のサポートを受けることで、手続きにかかる負担を抑えながら、返金に向けた対応を進められます。
二次被害を防ぐ!信頼できる弁護士事務所の選び方
弁護士事務所のなかには、解決できない事案を受任したり、被害者の不安につけ込んで高額な費用を請求する悪質な事務所も存在します。
二次被害を防ぐためには、次のポイントを確認しましょう。
| 確認ポイント | チェックする内容 |
| ①契約前に担当弁護士から説明を受けられるか | 事務員とのやり取りだけで契約が進まず、担当弁護士から返金の見通しや対応方法、リスクについて説明を受けられるか確認する |
| ②返金を断定する広告を出していないか | 「必ず返金できる」「絶対に取り戻せる」など、結果を保証するような表現を使っていないか確認する |
| ③費用の内訳が明確か | 相談料・着手金・成功報酬・事務手数料など、いつ、どのような費用が発生するのかを契約前に確認する |
| ④弁護士の登録情報を確認できるか | 担当弁護士の氏名や所属弁護士会が明記されているかを確認し、日弁連の弁護士検索でも登録情報を照合する |
| ⑤詐欺被害への対応実績・返金実績があるか | 相談実績の件数だけで判断せず、自分と似た被害や支払い方法について対応経験があるかを確認する |
担当者の説明が曖昧なまま契約を急かされたり、返金の可能性だけを強調して費用やリスクを説明されなかったりする場合は、その場で契約せず、一度持ち帰って検討しましょう。
弁護士の登録情報は、日弁連の弁護士検索から確認できます。ただし、登録が確認できることは、その弁護士が実在することを確かめる材料のひとつにすぎません。依頼先を決める際は、説明内容や料金体系、契約条件なども含めて比較することが大切です。
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ご依頼の際には弁護士が面談を行い、被害状況を確認したうえで、返金の見込みや今後の対応、弁護士費用についてわかりやすくご説明します。契約から返金交渉までオンラインで進められるため、事務所へ足を運ぶことが難しい方もご相談いただけます。
被害額が少ない場合や、証拠を一部削除してしまった場合でも相談は可能です。返金交渉を進められるかどうかは被害状況によって異なるため、まずは現在の状況をお聞かせください。
詐欺被害の相談でよくある質問
最後に、詐欺被害の相談についてよくある質問を紹介します。警察と弁護士のどちらに相談すべきか迷っている方や、被害額が少なく相談をためらっている方は、参考にしてください。
被害届が受理されない場合はどうすればいいですか?
警察に相談しても、すぐに被害届の受理や捜査につながるとは限りません。被害の経緯や相手とのやり取り、支払い記録などを整理し、あらためて相談することで状況を詳しく伝えられます。
また、警察への相談内容によっては、消費生活センターや法テラスなど、別の相談窓口を案内される場合もあります。被害届が受理されなかった場合も、返金請求を含め、ほかに取れる対応がないか検討することが大切です。
警察と弁護士、両方に相談してもいいですか?
警察と弁護士は役割が異なるため、両方に相談することが可能です。警察には被害届の提出や口座凍結の依頼、弁護士には返金請求のように並行して相談することで、被害回復の窓口を広げられます。
詐欺被害では、時間が経過するほど解決が難しくなる傾向にあります。詐欺被害に気付いた時点で、警察や弁護士へ相談し、状況に応じて対応を進めることが大切です。
少額の被害でも弁護士に相談できますか?
少額の被害について相談や依頼を受け付けているかどうかは、法律事務所によって異なります。
法律事務所Zでは、被害額が少ない場合でもご相談いただけます。被害額や支払い状況などを伺い、返金の可能性や成功報酬とのバランスを踏まえながら、返金交渉を進めることが相談者にとってよい選択となるか、一緒に検討します。
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