占いサイトにはまって、気付けば100万円以上を使っていた。そんな消費者トラブルが増えています。
法律事務所Zに寄せられた多数の被害者からのご相談から、“占い詐欺”の実態が見えてきました。もちろん、占いは不確実なものですから、当たらなかったとしても直ちに違法になるわけではありません。占い詐欺業者は、この「穴」をついてビジネスをしています。
では、占いサイトが「詐欺」となるのはどのような場合でしょうか。実は、3つのチェックポイントがあるのです。
始まりはインターネット広告
実際にあったケースを紹介しましょう。
田中さん(仮名)は、職場の人間関係でもいいことがなく、家族の健康問題もあり、毎日ひとりで悩んでいました。スマホでネットサーフィンをしていたとき、ふと目にした「無料鑑定」という広告が目に留まります。「無料だし、やってみるか」。そう思って「閃きの扉」(仮称)というサイトにアクセスしました。
サイトには「体験者が感動のあまりに涙した、実力派占い」「驚愕の的中率であなたを導く!」「お客様一人ひとりを個別鑑定」「7万人の喜びの声」などの言葉が並んでいます。田中さんは、藁にもすがる思いで「初回鑑定無料」のボタンを押してしまいます。
無料鑑定には会員登録が必要でした。田中さんは、ユーザー名、生年月日、性別、血液型、婚姻歴、メールアドレスなどの個人情報を入力し、利用規約に同意します。家族にバレたくなかったので、本名ではなく「アヤ」というニックネームで登録しました。この時点で会員登録が完了し、無料で150ポイントが付与されました。
メールとポイントで課金に誘導
会員登録が完了すると、麗晶(仮名)という鑑定士からメールが届きます。そこには、「【たもな】この言霊をこちらにお送りください。龍聖(仮名)先生の生涯最後の鑑定を、アヤさんの幸せの為に行なっていきます!」と書かれていました。
鑑定師に返信するためには、1回につき150ポイントが必要です。田中さんは、無料で付与された150ポイントを使って、麗晶という鑑定士に「たもな」と書いて返信をします。
すると、麗晶から「今回の鑑定は,過去鑑定と未来鑑定を同時に行う、夢叶(仮名)先生ならではの鑑定となります。」というメッセージが届きます。
そのメッセージには「【はえおす】と唱えましょう。そうすれば、あなたの運勢が向上します。終わりましたら、私の方に一言、【ほえんじ】とお送り下さい。」とも書かれていました。
しかし、田中さんは、無料で付与されたポイントを使ってしまったので、返事をすることができません。ポイントは、1,500円で150ポイントから購入でき、4,500円で500ポイント、7,500円で850ポイント、12,500円で1,550ポイント、25,000円で3,400ポイント、35,000円で5,000ポイント、50,000円で7,500ポイントという7段階の料金設定となっていました。
田中さんは、自分の運勢を少しでも向上させたいという一心から、【ほえんじ】という言葉を返信しました。その後も次々に鑑定師が登場し、さまざまな占いのメールが届きました。田中さんは、麗晶やその他の鑑定師の指示に従い、ポイントの購入と返信を繰り返しました。
裁判所はどう判断したか
気が付けば、7カ月で約400万円ものお金を田中さんは使ってしまっていました。肝心の運勢は、一向に向上することはありません。田中さんは、だんだんと不安になっていき、勇気を出して弁護士に相談しました。こうして、田中さんは、占いサイトの運営会社と代表者に対して、400万円の返還を求める裁判を起こしたのです。
裁判所が着目したのは、運営会社が「閃きの扉」のサイト上で謳っているサービス内容どおりに行われているか否かです。
「閃きの扉」のサイト上では、各会員に対して個別に鑑定師が占いを行い、その結果に基づいて悩みごとについてのアドバイスをすると説明されていました。ところが、裁判所は次の3つのポイントから、説明通りのサービスが運営されていないとして、占い詐欺だと認定したのです。
裁判所の着目ポイント①鑑定師の存在
そもそも、この事件では、運営会社が鑑定士と契約をしていたという事実すら認められませんでした。裁判において運営会社は、鑑定師との契約関係や、鑑定師が具体的に占いや祈祷などを行っていることを裏付ける証拠を提出できなかったのです。
鑑定士が占いをすると謳いながらも、実は鑑定士がいないという場合があるのです。この場合は、詐欺と認定されやすくなります。
裁判所の着目ポイント②個別に占っているかどうか
また、「閃きの扉」では、個別に占うと謳っておきながら、実際には利用者ごとに「個別」に占われていませんでした。それは田中さんに届いたメールの内容からも明らかで、複数の鑑定士が出てくるものの、ほとんど同じ内容のメールだらけだったのです。これでは本当に占っているのかが疑わしいです。それどころか、田中さんとは別の利用者にも、同じ内容のメールが使われていました。
つまり、事前に用意した定型のテンプレートを使って、機械的にメールを送っていたに等しいのです。これではサイト上の「占い」の説明とは全く異なりますから、詐欺と認定されやすいのです。
裁判所の着目ポイント③有料ポイントの消費が目的になっている
このように、①そもそも鑑定士が存在せず、②個別の占いもしていないので、実質的には「占い」の実態がありません。そうすると、単に、運営会社は、有料ポイントを消費させるためにメールを送っているというほかありません。このように、利用者を「占う」ためにお金をもらうのではなく、単なる有料ポイントの消費が目的だと認定されると、これも詐欺と認められやすくなるのです。
詐欺行為と判断
裁判所は、これらの3点から「閃きの扉」は、占いを行うことを標榜しておきながら、実際は有料のポイントを費消させて利益を得る行為をしているもので「詐欺」であると判断しました。これにより、不法行為として、運営会社は田中さんに400万円を支払なさいという判決が出たのです。
ここまで読んで下さった方で、田中さんのケースと同様に同じような内容の鑑定メールが複数の鑑定師から届くという方、課金と返信を繰り返しているという方は、詐欺サイトの被害に合っているかもしれません。当事務所では、こうした過去の判例や返金請求実績をもとに最適な返金方法をご提案できます。「これ詐欺かも」と一人で悩まずに、まずはお気軽に相談してください。